中島先生便り
第5回 結腸切除(その2)

第5回も結腸切除の続きです。(1〜2は、第4回のページに掲載されています)

  1. 大腸癌の局所再発
  2. 大腸癌の肝転移
  3. 大腸癌の肺・腹膜・骨転移

の順に話していきましょう。
前にもお話したように、癌を、たちの悪さの順に並べると、膵、胆道、食道、肺、肝、胃、大腸、乳、甲状腺、となり、大腸癌はかなり下位に属します。発見が比較的容易で、癌の進行速度が遅く、激しい症状がなく、切除が簡単で、使える抗癌剤もいろいろあって、治療法を考える時間的余裕を我々医者にも患者さんにも与えてくれる、そういう癌です。

とはいえ癌は癌、大腸癌を宣告されて治療を受けた100人のうち、60人が治癒を獲得したとして、残り40人の癌にどうたちむかっていくか、そこが問題です。40人のうち1人でも2人でも治癒のラインにひっぱりこもうとして、日本中、世界中の医者が日夜がんばっています。

私もそうしてきました。しかし現実は厳しい。生存期間からみると、このような患者さんは、1年、2年までならなんとかいくのですが、2年のところに大きな壁があります。5年生かすのはむつかしい。

3.大腸癌の局所再発
このことは重大な2つの問題を含んでいます。局所とは、腸を切ってつないだその吻合部のことで、局所再発とは、その吻合部付近に癌が再発した状態を言います。素人考えでは、癌を取り残したから吻合部局所に癌が再発したのではないかと思われるでしょうが、問題は、そう単純ではありません。

50歳男性、血便で来院し、検査の結果、S状結腸に癌があり、同時に肝臓の右葉に、テニスボール大の転移がありました。S状結腸切除と肝右葉切除が必要ですが、両方一度にやるのは手術が大きすぎるので、はじめにS状結腸切除して、3週くらいして回復してから肝右葉切除をしようということになりました。

まず担当医がS状結腸切除したのですが、縫合不全をおこしました。腸をつないだ部分がきれいにつながらず、つなぎ目から便がお腹の中に漏れて、熱が出たり、お腹が痛んだりするのです。外科の業界ではこのような状態を“漏れる”という意味で“leak”と呼びます。糖尿のある人、肝臓が悪い人、太っている人、ある種のホルモン剤をのんでいる人においては、leakの危険は通常より大きく、仕方のない面もあるのですが、普通どおりにやればleakなどは考えられず、“担当した外科医の腕が悪かった”と言わざるを得ません。

しかし、leak=死とはならないところが大腸外科や胃外科の“甘いところ”であり、ごはんをたべさせず、高カロリーの点滴をして、吻合部近くに手術のときに入れてあったドレーン(ビニール製のやわらかいチューブ)から漏れた便汁をすい出してやり、抗生物質を投与してやれば、次第次第に治っていくのです。

この人も、かなり苦しみましたが、5週で治り、ごはんをたべられるようになりました。当初の予定よりずれこんで7週目に、肝右葉切除を行ないました。この手術は私がやりました。特に問題なく経過し退院しました。

問題はこの後です。数ヶ月して、癌が吻合部局所に再発して糞づまりとなり、再入院したのです。担当医が再開腹するとleakがあった吻合部に再発した癌が塊をつくっており、まわりに腹膜転移も伴なっていて、切除不能だったので、その口側に人工肛門をつくりました。癌はちゃんと切除されているのにleakがあると、その場所に癌の局所再発が生じやすいのだ、ということを私は皆さんに言いたいのです。

外科医の中には、leakがどうした、どうせleakなんか治る、とたかをくくっている人たちがいます。確かに治ります。局所再発の危険が増大しますけどね。切ってつなぐだけの手術、気合を入れて間違いなくやって欲しいものです。

Leakがあると、どうして局所再発がおこりやすいのでしょうか?
大腸という管の中に進行癌があると、癌の塊からはがれおちた癌細胞が、管の中をウロウロしているのでしょう。癌を含めて管を切りとってつないだ時に、つなぎ目の状態がよくない=縫合不全がある=ナマナマしい傷がある、と、その傷の部分に、管の中をうろついていた癌細胞が“生着”するのではないでしょうか。
癌細胞が1個だけウロウロしていても、周辺の治安が良好であれば、リンパ球やらマクロファージといった警官がかけつけてきて、手錠をかけてくれるのだと思います。周辺の治安が悪い=ナマナマしい傷がある=縫合不全がある、と、癌細胞がその場所に生着して、事務所を構え、どんどんはびこって、局所再発の塊をつくるのだと思います。

この患者さんは、腹膜〜骨〜肺転移により、1年後に亡くなりました。縫合不全があってもなくても1年という予後は変わらなかったかもしれない、しかし少なくとも縫合不全がなければQOL=quality of life=生活の質を上げてやることができたと思います。

次は、10年以上前の話ですが、55歳女性、直腸がん。
直腸にも下の方=肛門のすぐ近くで、指診すると癌の塊を触れる 〜 上の方=肛門から離れていて指診しても触れることができない、と、いろいろな場所があります。

直腸以外の大腸=結腸の場合は、腹さえ開ければブラブラしており、いかようにも切除することが可能なので、癌の場所について数pのちがいをグダグダ言うことはないのに対して、直腸だけは数pのちがいが天地の差となります。

この方の場合は、直腸指診により癌の塊を触れました。
触れただけで進行癌ということがわかり“ある術式”が必要と思われました。

“ある術式”とは「腹会陰式直腸切断+側方リンパ節郭清+人工肛門造設」です。簡単に言うと、お腹およびおしりの双方向から直腸をくり抜いてとってしまい、腸の断端を人工肛門として左下腹部に出す、という術式です。手術時間5時間、出血量300mlの中くらいの手術ですが、私はこの手術が嫌いです。危険な手術ではないのですが、視野が良くないので美しさがないのです。
術者の私より患者さんのほうがもっと嫌いでしょう。術後は人工肛門の生活になるのですから。この患者さんも相当に嫌がって、人工肛門をつけるのなら手術を受けないと言い出す始末。

しかし結局、「癌があと5p、上の方にあれば肛門を残して、腸をつなぐことができるが、実際に今ある直腸下部の癌に対しては、この手術を選択するしかない、でないと、とり切れずに局所再発し、1〜2年で死にますよ。」という私の説得に折れ、予定通り手術を受けました。

彼女は今も元気です。
このパターンの医者と患者のせめぎ合いは本当に多いです。医者の言うとおり人工肛門をつけてうまくいった人=A、うまくいかなかった人=B、医者の言うことを聞かず我を張り、腸をつないでもらってうまくいった人=C、うまくいかなかった人=Dとすると、A>C、B<Dです。

以上2人の患者さんを紹介しましたが、この大腸癌局所再発の項で私が言いたかったことの第1は、「leakは局所再発に関係している」、第2は「直腸の下の方の進行癌は無理せずくり抜いてとり、腸をつながずに人工肛門を置いたほうがよい、でないと局所再発の危険が増す」という2点です。

大腸癌の再発様式の中で最も多いのが局所再発です。最近では、手術の前に放射線をかけたり抗癌剤をやったりして、術後の局所再発を減らそうという試みや、何とか人工肛門をつくらず下の方で腸をつなごうとする工夫が進歩しており、minor changeをくり返しておりますが、前述の2点の重要性は今も変わりません。

この項の終わりにもうひとつ骨盤内臓全摘の話をしましょう。
30歳女性、5歳の子供さんが1人居ます。
おしっこに空気が混じる“気尿”という珍しい訴えで受診してきました。おしっこの最中にゴボッゴボッと空気がいっしょに出るというのです。

調べてみると、直腸の上の方に進行癌があり、この癌が直腸の前方にある子宮、さらにその前方のある膀胱へ食いつき、直腸と膀胱が交通して、直腸内のgasが膀胱へ入って、おしっこといっしょにgasが出るという全く奇妙な病態でした。

患者は若い、子供は小さい、直腸癌は進行しており子宮・膀胱へ達している、肝転移なし、肺転移なし、・・・・以上のような条件下に最も適した術式といえば骨盤内臓全摘をおいてありません。

直腸はくり抜いて全部とり、左下腹部に人工肛門をつくる、膀胱は全部とって小腸で代用膀胱をつくって尿管をつなぎ、右下腹部に代用膀胱の出口をつくる、子宮と卵巣は全てとるから当然もう子供は産めない、という大きな手術です。手術時間10時間、出血量2000mlというところです。直腸癌の局所再発を防ぐという意味においては究極の術式でしょう。

手術は非常にうまくいき、経過良好、10年以上経った今も彼女は元気です。子供さんも大きくなったことでしょう。私自身、この方を含めて骨盤内蔵全摘を3例担当しましたが、長生きしたのはこの方だけです。やはり非常に進行した直腸癌を対象としているため、手術そのものがうまくいっても再発により1〜2年しかもたないことが多いようです。
4.大腸癌の肝転移

次は大腸癌の肝転移です。大腸癌切除後の再発形式として最も多いのが局所再発、第2位が肝転移ですが、その差はわずかであり、局所再発と肝転移をコントロールできれば大腸癌は8割方制御できるといっても過言ではないでしょう。

腸を栄養する動脈から、腸の毛細血管に入った血液は毛細血管をめぐった後、門脈という特殊な静脈に入ります。門脈は肝臓に流れ込みます。したがって、大腸に生じた癌の細胞が、毛細血管に入り、血流に乗って門脈に入り、肝臓へ達して新しい巣をつくるという現象は全く自然なことなのです。

私は腹部外科の中でも特に肝臓、胆道、膵臓、脾門脈といった領域を専門としてきたため癌の肝転移については本当に沢山の症例の治療にあたってきました。とくに大腸癌の肝転移は多数診てきました。肝転移巣を切ってとる、肝転移巣に電気針を刺して焼く、肝臓へ入る血管に管をうめこんで抗癌剤を直接肝臓へ流す、という3つの治療が3本柱となります。

抗癌剤ののみぐすりや点滴もあるにはありますが、まずは期待薄であり、このような治療をつづけることは、抗癌剤のエキスパートが担当していない限り、時間のムダです。業界の恥部をさらすようで心苦しいのですが、「私は自分の担当する患者が癌を再発していることを認識してますよ、お国が許可したくすりをちゃんと使ってますよ」という、主治医から患者あるいは世間へのアピール、何かゴタゴタがあったときの免罪符、のような感覚で、効くか効かないかわからないような抗癌剤が多量に消費されつづける国ニッポン・・・。

ついついグチが出てしまいました。話を元に戻し、実際の症例を紹介しましょう。
65歳男性、謳いの先生。血便が出るというので検査してみると、S状結腸に進行癌があり、同時に肝両葉にパラパラと転移がみられました。いや、パラパラというような、なまやさしいものではなく、ボコボコに転移していました。

肝臓は沈黙の臓器、こんなにボコボコになっても症状が出ないのですね。奥さんはがん告知をしないでくれとおっしゃいましたが、私は、「S状結腸に進行癌があって、肝にすさまじい多発転移があり、手遅れの状態である」ことを患者に話し、「今後、安楽かつ積極的な治療をやっていくので私について来てくれ」と頼んだところ、「お願いします。」ということになりました。

まずS状結腸を切除して吻合し、ついでに肝臓へいく動脈へ管をうめこんで手術を終了しました。手術終了後から肝臓へ抗癌剤を流し始めました。1ヶ月流しつづけて退院、その後外来で、休み休みではありますが肝動脈への抗癌剤注入、略して動注をつづけました。
この方は4年10ヶ月で亡くなりました。当初の状況からして4年10ヶ月という生存期間は驚異的なものであり、この間生活の質Quality of life 略してQOLも充分保たれ、好きな謳いの稽古もつづけておりました。

少し前動注研究会という医者の集まりで、日本を代表するような先生がこう言いました。「皆さん動注動注といいますが、せいぜい2年くらいでしょう。5年の生存を得たことがありますか?」と会場の皆に問いかけたのです。それまで動注治療のすばらしさを口々に言っていたDr.たちがシュンとなってしまいました。「私は2例持っています。」とその先生が言われました。
大腸癌の多発肝転移を、動注治療で5年持たすのは本当に大変なことです。わたしの4年10ヶ月の症例は開腹時、肝転移がボコボコにあり、できる範囲で電気針を刺して焼きました。つづいて肝動脈に管をうめこみ、5-Fuという抗癌剤1アンプル=5ml=250mgを、10アンプル=1週間分=1クールとして、結局64クールを動注しました。

この5年間の間には、肝動脈の流れが悪くなったり、薬剤が肝臓以外の臓器に流れたり、腹膜転移の塊が腸閉塞をおこしたりと、それこそ筆舌に尽くし難いトラブルがあり、その度に問題解決の必要をせまられ、解決しました。それでも5年には届きませんでした。

この4年10ヶ月の症例の陰には、よくて2〜3年、悪くて半年の症例が多数眠っています。切除不可能な大腸癌多発肝転移の患者を、動注治療を軸として5年生かすのが今現在の私のテーマです。ただ私は外科医なので切るのが仕事です。切れない人には電気針で焼いたり動注したりしてますが、基本は切ってとることです。

私はこれまで術者として肝切除を200例ほどやりました。肝切200例の対象となった病気は、原発性肝細胞癌が110例、胆道癌が40例、肝転移が50例です。切除した肝転移50例の原発巣は、胃癌・乳癌・膵癌・前立腺癌などいろいろありましたが大半は大腸癌です。

68歳女性、他院で大腸癌を切除されて1年経ち、肝臓に径5cmの転移が出現したというので私の外来に来ました。切除し、うまくいって1年半、今度はまた別のところに肝転移が出現、これをまた切除しました。ところがそれから1年半経ちまたまた肝転移が出現、患者はこれまで大腸、肝臓、肝臓と3回も手術を受けており、さすがに今回は、「手術以外の方法で何とかならないでしょうか?」ということになり動注をやることになりました。

その後2年間、外来で動注をやり、肝臓はきれいになったのですが、今度は肺にパラパラと転移が出てきました。患者はケロッとしているのですが、治療の必要性を説き、この1年間のみぐすり+点滴の抗癌剤治療をやっています。幸い副作用もなくよく効いて、CEAという癌の勢いを示す数字が50から3まで低下しています。正常値が5以下なのでよく効いています。

最初に大腸癌を切除してから丸7年経って居ます。あと何年もつかわからないけれど“癌を治療しすぎないように”“副作用を出したら負け”という気持ちで抗癌剤治療をつづけます。ここで断っておきたいのは、「この人の経過がこれほど良いのは、私の治療が良いからではない」ということです。

この人の大腸癌は、そういう癌なのです。同じ大腸癌、顕微鏡でみても特段変わりばえのしない普通の大腸癌でも、患者によって増殖スピードが大きく異なるものです。癌のたちがもともと良いのか、患者のcharacterが明るく、免疫力が強いのか、私の抗癌剤治療がたまたまスイートスポットに当たったのか、とにかく一所懸命にやっていると、10例に1例くらいunbelievableな症例に出会うものです。

次は悪いケース。65歳女性、他院で大腸癌を切除されて半年も経っていないのに、担当医から「肝臓にたくさんの転移があり、手の施しようがない、余命3ヶ月です」と言われ、その病院での治療を断って私の外来に来ました。

診てみると、たしかに手の施しようのない肝転移で、余命3ヶ月で間違いないと思われました。処方されている薬をみてみると、前述の“免罪符のような抗癌剤”でした。投薬の工夫も何もない、ただ厚生省が許可した薬を、10年1日のように処方するだけ…、たしかに間違ってはいません。保険の査定を受けることもないでしょう。しかしそれではダメ、効かないのです。

何よりも驚いたのは患者及び家族全員が医者への不信に満ち満ちていたことです。私はこの患者さんを外来で1年半治療しましたが、本当に疲れました。wetで依存心が強いくせに、自我意識も強く、あつかいにくい人がいます。

医者の側から見た“良い患者”とは、dryで社会的に自立しているがこと病気にかけては素直に治療方針に協力してくれる患者であり、このような方々の治療成績が良好なのは間違いありません。変な宗教や、妙な民間療法に走って時間とお金を浪費している方々がなんと多いことか。癌治療の現場にいると痛切に感じます。「それが人間」と割り切るしかないのでしょうか。

この項の最後に、私が術者として担当した大腸癌肝転移切除40例の5年生存率=40%であったことを付け加えておきます。この成績は全国的にみて、可もなし不可もなしと言った標準的なものです。

ここ酒井病院にきてからも、大腸癌多発肝転移の症例を、3例診ています。
1例は、切除して、予防的に動注しています。2例目は焼いて動注してます。3例目は、肺転移もあり、動注+のみぐすり+点滴抗癌剤によって、いずれも外来でみています。
皆さん外見はお元気そうですが、とくに3例目は、いつどうなってもおかしくない状態。治療をはじめて半年になりますが、今のところうまくいっています。外来でのmildなやりとりの中にも、私はじっと逆転ホームランをねらっております。

5.大腸癌の肺・腹膜・骨転移

大腸癌の肺転移、腹膜転移、骨転移ですが、一言でいうと、どうにもなりません。
生存期間をのばすことはできますが、治癒はありません。ただこれは、私が担当した患者ではないのですが、大腸癌の肝・肺転移を同時に切除して7年間再発なしと言う65歳女性をみたことがあります。

私が主治医として、大腸癌を切除し、その肝転移を切除したあとに出現した肺転移に対して、いやがる肺外科の同僚Dr.をひっぱりこんで肺切除をしてもらったことが3回ありますが、3例ともすぐに、肺・腹膜・肝などに再発し、ダメでした。

肺外科の先生がいやがるのは、手術がむつかしいからではありません。“手術に意味がないと感じるから”なのです。そのことは私も重々承知しているのですが、何とか大きな癌の塊だけをパッと取って、小さなやつはくすりで治療しようと考えるわけです。
このような素人めいた甘い考えでは、癌の壁をつきくずすことはやはりむつかしい。でも他に手がない。1例1例つみ重ねて、少しでも次の患者に役立てていくしかないのです。

腹膜転移もしかり。腹膜に転移した癌の塊が腸を圧迫して腸閉塞をおこすので、しかたなく切除しますが、すぐに再発します。有効なくすりも、今のところ“無い”と、あえて断言しておきましょう。骨転移。どうにもなりません。

65歳男性、お坊さん。
腹が張ると訴えて外来に来ましたが、張るどころか妊婦のような腹です。調べてみると、普通サイズの大腸癌があり、同時に巨大な肝転移がありました。開腹し、大腸癌を切除して、同時に、拡大肝右葉切除という術式で肝転移を切除しました。

このときの切除肝重量は3700gで、私がこれまで手がけてきた肝切除の中でも最大級のものでした。手術はうまくいき、退院しましたが、半年もたたないうちに、腰の激痛で再入院しました。腰椎=腰の骨への転移により、骨がつぶれて、神経が圧迫されているのです。モルヒネしかありません。放射線などもかけてみましたが、効果なし。あれほど大変な手術をのりこえたのにわずか半年でこのザマですからいやになります。患者さんはしばらくして亡くなりました。外科医として無力感にさいなまれるのはこんなときです。

以上、この項で述べてきたような、どうしようもなく進行した癌の患者さんは、いったいどうすれば良いのでしょうか?
この領域で商売しているヤカラがいます。新聞、雑誌には連日デカデカと広告が出ていますし、各県に2〜3ヶ所あやしげな“免疫療法”なる看板をかかげた医療機関が存在します。
私の担当した癌患者のうちいったい何人がそちら方面へ走っていったことでしょう。このうちのたった1人でもよいから「先生、治りましたよ。」という報告をききたいものです。いまのところゼロです。彼らは、よくもまあ誇大広告の罪でつかまらないものだと感心してしまいます。

私は彼らの言動を100%否定するものではありませんが、以下の注文をつけたい。第1に安くしろ。第2に、研究および臨床の報告をきちんとした学会あるいは医学雑誌に報告してくれ、単行本など出さんでよし。この2点です。
私のような一般の医者には、このような患者さんを治癒させる力はありませんが、それでも少しずつ、安楽に長生きできる方向にすすんでいます。21年前私が医者になった当時から比べると、長足の進歩をとげています。これからも1例1例、がんばって積み重ねていくだけです。

今回=第5回の結腸切除の話は盛りだくさんになりました。
大腸癌は治療しやすく、その成績も良好な癌ですが、油断すると、今回お話したような大変なことになるので、とくに太っている人、宿便の人は、近くの信頼できる先生に診てもらうことが大切です。
次回=第6回は、痔の話をしましょう。

H16.4.26 中島 公洋

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